台湾からの視察同行記 – 南九州の食と文化 1

はじめに
河原農耕園も大変お世話になっている、“九州の食と文化応援隊”(以下 応援隊)という、九州各地の食と文化に携わる生産者さんや事業者さんの集いがあります。
応援隊は明確な決まりのある事業や組織という訳ではないのですが、延べ1,000人以上と言われる応援隊員(生産者や地域事業者など)同士の横の繋がりを大切にしながら、様々な情報を共有し合ったり、イベントがあれば声をかけ合い、時には一緒に何かを作り上げたりと、九州各地の点と点を線から円へと繋げていく “食と文化” のネットワークの一つです。

以前に九州のムラ市場(〜2014)の店長を務めていらっしゃった “中野ユキヒロさん” (以下 中野さん)を中心とする「九州の食と文化応援隊」は、九州朝日放送のラジオ番組にもなっていますので、ご興味のある方はぜひご視聴下さい。 ≫中野ユキヒロの食と文化応援隊



8月30日〜 中野さんと交流のある台湾台中市の「東海大学・日本言語文化学学科」の林珠雪准教授を中心に、現地・台湾から “食と文化” に携われている方々15名が来日されるということで、台湾の皆さんの南九州(鹿児島、宮崎、熊本)の視察旅行に私たちも同行させて頂きました。


中野さんと一緒に台湾の皆さんを鹿児島空港でお出迎えし、最初に訪れた視察先は鹿児島県霧島市の女性加工グループ「もんぺおばさん」。こちらの代表を務める大平篤代さん(写真左)に「もんぺおばさん」の活動などについてお話を伺いました。

《愛する人に安全で美味しい物を食べさせてあげたい》という思いで加工グループを立ち上げられて32年になる「もんぺおばさん」。愛する人に〜 という思いをそのまま形にしたような品々は、食べる人への愛、地元への愛情が込められたものばかり。地元霧島産の大豆と麦を使った減塩麦味噌 “手前みそ” や、南九州の郷土菓子 “ふくれ菓子” など、様々な品を毎朝4時頃から作られているというお話を聞いて只々脱帽です。台湾の方々も皆さん目を丸くして驚かれていました。


試食を出していただいた “ふくれ菓子” はいわゆる “蒸しパン” なのですが、黒砂糖と重曹(重炭酸ソーダ)を使用されているからか、昔ながらの製法だからか、それともその両方なのかは残念ながら聞きそびれてしまいましたが、ふっくらしてるのにどっしりというか…ふわっとモッチモチというか……上手く説明できませんが、ほとんどスーパーなどで見かける蒸しパンしか食べたことがなかった私にとっては、ふくれ菓子と蒸しパンは似て非なる食感で、どこか郷愁に駆られるような素朴な甘みが個人的なツボにハマった「もんぺおばさん」の “ふくれ菓子”。出していただいた試食は、台湾の方々と一緒にあっという間に平らげてしまいました。

霧島を訪れる際には、ぜひ一度 “ふくれ菓子” をご賞味ください!


↑こちらは視察同行最終日に買って帰った“手前みそ”。毎日お味噌汁を頂く我が家ではあっという間に使い切ってしまいそうですが、こちらも「もんぺおばさん」ならではの優しい味わい。減塩とのことでしたが、とてもいい塩梅の麦味噌で使い勝手もよく重宝しております。
余談になりますが、滞在期間中に旅館で毎食出して頂いた “お味噌汁” は台湾の方々にも好評のようでした。国や地域によって食や文化は違えど、美味しいものは共通して美味しいものなんですね。

そして「もんぺおばさん」の32年ーー
綺麗な加工場で、笑顔で視察隊を迎えてくださった大平さんでしたが、実は以前に火事に遭い、「もんぺおばさん」の加工場がほぼ全焼してしまった過去があるのだそうです。加工場が火事に遭った当初、大平さんは「もんぺおばさん」の活動を辞めるかどうかの決断を迫られていたそうなのですが、偶然にも《 もんぺおばさん 》と書かれた丸太の看板だけが焼けずに残っており、それを見た中野さんの「屋号の書かれた丸太の看板が残ったのには何かわけがある。グループを続けていけという事に違いない」という言葉や、大平さんのお父さんの「お前が辞めるなら俺がやる、ここで辞めるのはもったいない」という言葉などに背中を押され、活動継続を決意され、力を尽くし、火事から僅か数年で加工場を再建して現在まで活動されてきたのだそうです。
「家族や中野さん、周囲の人達に背中を押してもらったからこそ、“もんぺおばさん” の活動を続けてこられた」「活動を再開するために借金を抱えたので、60歳になっても70歳になっても仕事ができる様、考えながら作業場を作りました」と仰る大平さんの言葉に、台湾の方々も私たちも深く頷くばかりでした。

力強い周囲の支えと、大平さんの大きな決断があったからこそ、今も「もんぺおばさん」の美味しい “ふくれ菓子” や “手前みそ” を頂くことが出来るのだと思うと、手を合わせて「いただきます」と言う他には、言葉を見つけられません。 ≫もんぺおばさん HP


「もんぺおばさん」の視察を終えた後は、宿泊先の旅館にチェックイン。
今回の視察旅行の主な滞在先として宿泊させて頂いたのは、霧島市内、それも「もんぺおばさん」の加工場から目と鼻の先にある「祝橋温泉旅館」。事前にネットで「霧島の温泉の中でも泉質は最高クラス」というレビューを幾つか拝見し、密かに期待していた温泉旅館だったのですが、いざ宿泊すると、期待を裏切らない泉質(日帰り入浴だと300円!!)に加えて、旅館のスタッフの方々(おばちゃん達)はアットホームな雰囲気、しかもご飯が美味しい。各部屋には調理できるスペースもあり素泊まりも出来るんだとか。この度お世話になった祝橋温泉旅館は、実家に帰ったかのような落ち着きと、最高の泉質と、旅の自由を与えてくれる素晴らしい温泉旅館でした。

続く ≫


記事:河原行宏